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  • 吉田 翠

かぐやかぐや


夜空に浮かぶまんまるなお月さま


孤独な月のうさぎはひとりの娘と仲良くなった


美しさゆえの妬みなのか


友すらいない娘はうさぎと話すのを楽しみにした


互いの打ち明け話が尽きてきて


ある時うさぎは下界を見下ろし呟いた


娘よ娘わたしは一度不老不死の薬を作ってみたい


そのためにはどうしても


高価な石のつぶてを手に入れたいのだ


かわいそうなうさぎの頼みとあれば


とっておきのつぶてを持ち帰ろう


策を弄して娘は踊る


下界の者を欺くことに何の迷いがありましょう


すべてはかわいそうなうさぎのために


五色の絹の襟越しに匂いたつのは薄桃色の肌


御簾越しに歌を詠む幾多の殿方に


難問奇問さぁさぁお応えなされませ


娘はとっておきの石のつぶてを手にいれた


それは高貴な方のこころの苦悩


さぞやうさぎは喜ぶでしょう


策を弄して娘は帰る


下界の者を欺くことに何の迷いがありましょう


か弱き者に情けをかけてわたしを食せと火の中に


飛び込み焼かれその身をもって月に上がり


不憫なうさぎは讃えられ


尚かつもののあはれと詠まれる始末


見事に薬ができたなら


互いに飲んで不死永遠仲良く暮らそう

トントンガンガン


うさぎと娘がふたりして石のつぶてを打ち砕き


煎じて飲めば不老不死を得るという


仕上げた薬をひとかけら


娘が口に含んだその時に


ふわりと体が宙を舞い薬と共に夜空に散った


慌てたうさぎが手を差し出すも



天帝すなわち帝釈天に遮られ

やがて娘は


いかなる者の手にも決して届かぬ星となった


死することなく煌めき続ける


黒が深いほどに輝き放つ華の絵巻になったその娘は


下界で暮らすその日々に


輝夜と呼ばれていたと言う


うさぎは何を間違えたのか 輝夜はいかなる罪を背負うたのか 情にほだされ情に散る うさぎと輝夜の行く末は如何に

昔話を紐解くも月はただ

今宵も灯りを下ろすのみ




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